自己嫌悪
自己嫌悪
しかしついに伯父の箸が、玉子の方向に動いたその刹那、私は、自らのプライドをこなごなにし、思い描いていた筋書きを台無しにするような、自分でも信じられない行動に出てしまったのである。
こともあろうに私は、私は、なんと、手づかみで、伯父のたまごを口に入れてしまったのだ。パクッと。
なぜにそんな行動に出てしまったのか、自分でもよくわからなかった。
それがどれだけみっともなくてはしたない行為かぐらい、自分でもようくわかっていた。それまで私は礼儀の正しいよい子。ということになっていた。私は両親にそれなりに厳しくしつけられていた。
まさかこの子がそんなみっともないことするわけないと、あの時の両親は、目の前の光景が信じられなかったに違いない。
両親も伯父も、一瞬、あっけにとられた感じで、固まっていた。
すぐにその場で私は、両親にめちゃめちゃ怒られた。
「なにするねん、この子は、行儀悪い」
伯父は、
「あはは、かまへん、かまへん、子どもやねんから」
と、すぐに気にしていない素振りを見せてくれたけど。
きまりわるいったらなかった。
なんであんな意地汚い真似をしてしまったのか、ほんとうに、ほんとに、自分でもよくわからないのだ。
今でもあの時のことを思い出すとき激しい自己嫌悪に陥る。
魔がさすとは、あの時のようなことをいうのかもしれないとも思う。
伯父が帰ってから、私は、父にボカボカにされた。
思いっきり蹴られながら畳を転がされた。
ごめんなさい。ごめんなさい。もうしません。と泣きながらあやまって、畳の上を転がされ続けた。
そんなにされてまで欲しかった肝心の「たまごの味」は、すでに全く覚えていない。