おっちゃん
わたしの過ち「たまごの味」その2
1 おっちゃんがたまごを残したまま帰る。
2 母が片づけを始める。たまごの乗った皿をさげようとする。
3 と、その時、すかさず私が母にたずねる。
4 「おかあちゃん、そのたまご、もったいないから、食べてあげよか?」
5 母は、すんなり答える。
「そやね。食べて」
6 やったーいただき。めでたし。めでたし。
そうなる筋書きが私の頭の中にはすでにできあがっていた。
この場合、あくまでも「もったいないから、私が食べてあげる」というポーズをとるところがポイントだった。
私は、伯父のすぐ近くにちょこんとすわって、さりげなく、だけどともすれば、ついつい、じーっと、伯父の皿の上にあるおでんのたまごだけを見つめてしまっていた。筋書き通りの展開になることを祈りながら。
伯父の話などもちろん上の空で、たまごのことばかりを考えていた。
伯父は、なかなか帰らなかった。
だんだん不安になってきた。
今までのデータから、伯父はつまみにはほとんど手をつけず、酒ばかりを飲んで帰っていた。だから、きっと、伯父はこのおでんにもほとんど手をつけずに帰るはず、とふんでいた。
しかしその時の伯父は、どうしたわけか、どうしたわけか、箸をとり、おでんのちくわをつまみあげたのだ。
そしてほろ酔い加減で機嫌よくちくわを噛み締めていた。
「あかん、このままやったら、おっちゃんにたまごも食べられてしまう。どないしょう。」
私は、筋書き通りに物事が運ばないことを恐れはじめた。
私は、すでにたまごのことしか考えられなくなっていた。
続く